父が亡くなった日(2)
◆多分、AM2時頃だろう◆
1日中自宅に居た4月20日の夕方。
何となく騒つく嫌な感じがし、気持ちが変に高揚している。なんか今晩は寝られないかも。と単純に思ったが、今思うと、これが虫の知らせというものだったのかもしれない。
夕食の買い出しに行った。買い物は、まずは父が食べられそうなものを考えるのが日常化していた。
陽気が足りないから、山薬である山芋を食べさせよう。温泉玉子。野菜を煮てミキサーにかければ食べられるだろう。
この日の父の夕食は、お粥・山芋おろし・温野菜ペースト・温泉玉子・蜂蜜入りヨーグルト・野菜ジュース。
母が食べさせた。しっかり完食だった。
あとから母から聞いた様子は、この日の夜はいつもより落ち着きがなく、何回もチェアー型マッサージ機とベッドを行き来し、トイレも回数が多かったらしい。
明日は日曜日だから、ちょっとだけ朝ゆっくりしようと思ったが、いつもの習慣で朝5時前に目が覚めた。
6時を少し回った頃に玄関のチャイムが鳴る。
尋常じゃない鳴らし方。
嫌な予感しかしない。
母の叫び声。
「良美が冷たくなってる!」
「死んでるの?」と私。
「わからない!」と取り乱す母。
自分でもおかしく思ったのだが、あの脈と予感があったので妙に冷静だった。
ベッドに横たわる父は、いつもの様子と変わらず。「親父」と声をかけるが反応がない。
肩を揺らすが、反応はなく、違和感のある冷たさと硬さ。
頸動脈・橈骨動脈・足底動脈を触る。
瞳孔も観る。
反応がない。
顎の硬直具合から3〜4時間位経っているだろう。苦しんだ様子は全くなかった。起き出してきそうないつもの様子だった。
多分、いつもトイレに行く2時頃に目を覚まし、母を呼ぼうとしてそのまま事切れたのだろう。
母に「電話して!」と叫ぶ。「救急車?」と母。「違う!Aクリニックだよ!」
弟に電話をかける。「親父が死んだ。脈がない。」弟は無言のまま電話を切った。
親父と私の2人だけの、束の間の時間。
「親父、頑張ったなぁ。苦しまなくて、良かったよ。いい死に方だなぁ。」
開いていた目をゆっくり閉じさせた。
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